朝、ゆっくりと目覚め、いつもよりのんびりと洗顔をする。
普段通りキビキビと身支度を整える余裕は、とうになかった。
時間の流れがやけに遅く感じる。
外は、春の匂いがする。
それに混じって、まるで僕の心模様を表すかのように温かい雨が頬を濡らす。
自転車のペダルを漕ぐ脚がいつもよりも重い。
僕は、気を抜けば涙が溢れ出てしまう寸前だった。
振り続ける雨のように。
僕は人前で絶対に涙を流さない主義だ。
じいちゃんの葬式の時も、無理矢理明るく振る舞い、絶対に泣かなかった。
でも、家に帰って、お風呂に浸かってるときに涙が溢れて止まらなかった。
体の水分が空っぽになるまで号泣し続けた。
僕が人前で泣かない理由は、一度感情が爆発すると自分で制御できなくなるからだ。
そんな姿を見られるのは少し恥ずかしい。
だからどんなに悲しいことがあってもグッと涙を堪える。
側から見たら薄情な奴と思われるかもしれない。
だが、それでいい。
見せないからこそ、涙には価値があると僕は思う。
だから僕は最終日の今日も泣かなかった。
涙でお別れなんてイヤじゃん
笑ってお別れしたいじゃん
そして、やっぱり今回も家に帰って泣いた。
ASDは感情のコントロールと気持ちの切り替えがとても苦手だ。
今までの平静を取り戻すのには、もう少し時間がかかるかもしれない。
親愛なる後輩に捧げる。
どうか、あなたの旅路に、溢れんばかりの祝福を。