異動する後輩(男子)へのプレゼントと上司の昇進祝いを買いに、今日は定時で上がってデパートへ向かった。
後輩(女子)へのプレゼントは半年以上前に決まっていたから特に悩むことはなかったが、後輩(男子)へのプレゼントがこの直前になるまで決まらなかった。
「仲が悪いわけではないけれど、特別仲が良いわけでもない」という間柄のプレゼントが一番頭を悩ませる。
相手がどんなものを好きなのか、何を貰ったら嬉しいか知っていればどれだけ楽か。
新人の頃、幹事として部署全体でプレゼントする送別の品の選定を任されたが、結局最後は先輩に泣きついたのを覚えている。
結局後輩へのプレゼントはカルディの珈琲という無難なものにしてしまった。
ただ、ふと思ったことがある。
プレゼントは「何を渡すか」ではない。
「いかにして、相手の心を揺さぶれるか」なのではないだろうか。
僕は前の部署を異動するときに、上司からバスのトミカを貰った。
仕事で毎日乗っていた思い入れあるバスのトミカ。
今でもデスクに飾ってあるし、見るたびにあの頃を思い出させてくれる。
貰った瞬間、感動して鳥肌が立った。
「こんな素敵なプレゼント思いつかねえや…」と。
僕にそんな素敵なプレゼントは出来ない。
所詮はカルディの珈琲を選んでしまうような男だ。
ならば、せめて手紙も書こうと思う。
僕に文才があるわけではない。
言葉で相手を泣かせるなんて無理な話だ。
センスのある言葉も浮かばない。
ただ、ありのままに、最大限の惜別の思いを込めて手紙を書きたいと思う。
それこそが、僕にできる最大限の「相手の心を揺さぶれる」行為なのではないだろうか。
ちなみに、先に書いた通り、後輩(女子)へのプレゼントと手紙は既に決まっている。
特別仲が良い(と僕が勝手に思ってる)からこそ、すぐに決まった。
中身を見て「こいつは馬鹿なんじゃないか」と思われるかもしれない。
それとも「こいつらしいや」と思うだろうか、「要らねえ」と思うだろうか。
ただ、僕はこれしかないと思った究極のプレゼントだ。
多分、どんなものよりも忘れられない自信がある。
送別の時が終わり、家に帰って落ち着いて、ふつふつと異動する実感と寂しさが込み上げてきたときに手紙と一緒に見てほしいと思っている。
見た瞬間、その心に一際大きな花火を咲かせたい。
そして、その花火に、僕のことを忘れないでいてほしいと切に願いを込める。
でも、それは彼女に対してのプレゼントというよりも、
4月から抱えるであろう寂しさに、まだ踏ん切りがつかない僕自身に向けたエールなのかもしれない。